現在、変化の激しい時代の中で、企業のマーケティング活動は「正解がない」難しい状況に置かれています。

「VUCA」(Volatility-変動、Uncertainty-不確実、Complexity-複雑、Ambiguity-曖昧)という言葉をよく聞くようになりましたが、環境の変化が激しく、昨日の正解が今日の不正解になっている感覚は実生活でも感じたことがあるのではないでしょうか?

企業のマーケティング活動は、今までのように製品を作り、広告代理店に依頼してマス広告を実施すれば、ブランドが認知されて商品が売れる、というのは幻想であることを感じていると思います。その流れから企業は代理店に頼るのではなく、自らマーケティング活動を行うようになり、その背景はこのような変化に対応するためであります。

その流れの中で、「コミュニティマーケティング」に注目が集まっています。今回は、企業のマーケティング活動における「3つの変化」を理解して、なぜコミュニティに注目が集まるのか?を考えていきましょう。

①マス広告だけでは情報は届かない!?

はじめに、冒頭で述べたように現在、テレビCMをはじめとしたマス広告によるマーケティング活動のみで成果を出すのが難しい時代です。

背景として、インターネットの普及やテクノロジー進化により、様々なSNSやWebメディアが登場しました。さらに、スマートフォンが普及した今、テレビ以外のメディアに接触する時間が圧倒的に増えているのです。人によっては1日の中でテレビは一切見ないで、スマートフォン経由での情報収集のみの方もいると思います。

それらの普及による一つの変化として、企業が直接、ユーザーと接点を持つことが可能になりました。企業は自らメディアを立ち上げ、ユーザーに情報を発信するようになりました。施策やキャンペーンによっては「バズる」という言葉があるように、マス広告にない広がり方(拡散)を起こしています。

しかし、企業が自ら情報を発信できるようになったから、どんどんユーザーに情報を発信しましょう!という単純な話ではないのです。なぜならば、インターネットの普及に伴って、流通する情報量が2010年以降、爆発的に増えたからです。以下の図は、時系列で情報量の変化を表しています。

(出典)総務省「ICTコトづくり検討会議」報告書

企業は自ら情報を発信できる環境になりましたが、流通する情報量が増えたことにより情報が埋もれてしまったのです。しかも、これだけ情報がある状況において、ユーザーは無意識に自身に興味関心ある情報のみに接触するため、99%以上の情報は届かない確率とも言えるのです。

では、この状況において確率高く情報を届ける方法は何でしょうか。そのヒントは私たちユーザー側の視点で考えると見えてきます。

②企業とユーザーの信頼度が変わってきた!?

続いて、情報を受け取る側、商品を選ぶユーザー側の視点で考えてみましょう。

家電量販店のテレビコーナーを想像してみてください。様々なメーカーのテレビがラインナップしていますが、一つ一つの製品の特徴を答えられますか?おそらく、マニアでない限り難しいですよね。なぜならば、技術の進化もあり、製品の「機能」(テレビの場合、画質やHD容量、ネット接続可能など)はどのメーカーもほぼ同じ水準、品質だからです。

では、私たちは何を基準にして製品を選んでいるのでしょうか。

それは、「友人や知人が使っている」「ネットでのランキングが高い」「SNSでの口コミ評価が良い」などではないでしょうか。

以下の質問から、どちらの方が製品購入する際に参考になりますか?

  • TVCMや企業広告で知ったブランドA
  • 家族や友人が使っている、もしくは口コミの評価が高いブランドB

多くの方は後者を選ぶと思います。その証拠に以下のデータは、オンライン上に投稿された情報源において、家族や友人の信頼度が最も高いことを示しています。

(出典)2016 エデルマン・トラストバロメーター 日本調査結果

このことからわかるように、これまでは企業による広告が、製品を購入決定する際に強い影響を与えていましたが、現在は自分が知っている人や属するコミュニティ内での情報が強い影響を及ぼしているのです。

マス広告のみでは情報が届かなく、SNSやWebメディアの登場により企業が自ら情報を伝える動きが加速しました。しかし、情報の99%以上は届かない…。

この状況に対しての最善の策は、企業は自ら情報発信するより、自分たちのことを好意に思っているファンから伝えてもらうことなのです。企業による発信ではなく、私たち一人ひとりの発信に影響力がシフトしている状況では、ファンからそのファンの友人や知人に伝わる確率は高いのです。

③40年で4000万人が減る日本人口の変化

最後は、日本の人口減少についてです。これは日本国内でマーケティング活動する企業すべてに影響を及ぼすマクロな変化です。

ご存知の方が多いと思いますが、日本は現在、「人口減少社会」に突入しています(以下の図は、日本の人口の推移)。2008年の1億2808万人をピークに人口は減少しており、40年後の2060年には約30%の4000万人以上が減少する予測です。この数字は、毎年100万人(現在の仙台市の人口)が減少していく数字なのです。もう一度言います、毎年100万人の人口減少です。

出典:平成27年版 厚生労働白書

仮に、一人あたりのモノの消費量が現在と同水準で、企業がこれまでと同じやり方で営業活動を行うと、売上は単純に毎年1%弱、40年後は30%減少します。日本の人口減少は、企業の経営・ビジネスに影響を与え、企業はこれまでと違う戦略で顧客に価値を提供する必要があると言えるのです。この数字と事実であり、高い確率で起こり得る未来なのです。

まとめ              

3つの変化とコミュニティに注目が集まる背景をまとめると以下のようになります。

1.メディアと情報の変化マス広告のみでは効かない、企業の情報の99%以上は届かないということは、良い情報が必ずしも価値があるとは言えない。そのため、良い情報が届くために自分たちのファンにアプローチし、ファンと接点を持つ場をつくることで良い情報を届けていくことが必要になります。

2.企業とユーザーの信頼度の変化企業からの情報より、知人や友人からの情報の方が信頼度が高いということは、企業のマーケティング活動はよりユーザーを巻き込んでいく方向にシフトします。そのため、ユーザーが自分たちのファンになって情報を発信するなど、ファンが新たなファンをつくっていく仕掛けが必要になります。

3.日本の人口の変化毎年人口が減少し続けるということは、企業のマーケティング活動において新規の顧客を増やしていくことが難しくなります。そのため、パレート(20:80)の法則があるように、80%の売上をもたらしている20%の既存の上位顧客とより長く接点を持ち、ファン化していくことが必要になります。

これらの変化から、ファンを巻き込み、ファンと関わっていくマーケティング手法である「コミュニティ」に注目が集まっているのです。

変化の激しい時代の中で、企業のマーケティング活動において普遍的に必要な要素があるとするならば、それはファンを大切にすることだと私たちは考えています。社会が変化したとしても、マーケティング手法が変化したとしても、企業がファンと向き合うという本質的なことは変わらないのです。