東南アジアで蒸留酒「WANIC」を立ち上げたことをきっかけに、日本でも地域発イノベーションを主軸とした事業や研究に取り組んでいる九州大学 大学院 芸術工学研究院 准教授・徳久悟さん。

ご自身の体験をもとに、「コミュニティ」が地方創生にどのような役割を果たしているのか、詳しくお話を聞きました。

途上国で見つけたビジネスの種

ー徳久さんが地方創生に興味を持ったきっかけは何だったんですか?
2010年に、東南アジアで取り組んだ醸造酒 「WANIC」のプロジェクトです。

当時私は、社会との接点がまったくないような研究をしており、「社会に対してもっとコミットしたほうがいいんじゃないか」という思いがありました。

ちょうどそのとき、途上国・東ティモール民主共和国に赴いて課題を発見し、解決施策を考える『See-Dビジネスコンテスト』を知り、思いきって参加することにしたんです。

東ティモールでは、実際に1週間フィールドワークをするなかで、現地の方が収入不足によって電気を引くことが出来なかったり、良い教育が受けられずに、結果的にいい仕事に就けないという課題に取り組むことにしました。 

そこで、どうすればいいかを考えたとき、道端に大量に放置されていた「ココヤシの実」を使ってココナッツワインを作ることを思いつきました。ココナッツワインを作れるようなツールキットを開発し、現地の方にキットとレシピを提供し、ビジネスオーナーになってもらうことで 、「お金をあげるのではなく、お金を生み出す手段を提供する」ことができると考えたんです。

また、東ティモールの首都・ディリには国連の施設があり、通貨もドルで先進国の方が多く訪れていましたが、ディリにはローカルな商品が流通しておらず、 ホテルに置いてあるビールもバトワイザーなどでした。そんな、途上国に来ている先進国由来の方たちに対して商売をしていくことで、より現地の人の収入を上げることができるのではないか、と思いました。

現在は、輸出のことも考え、蒸留酒の製品プロトタイプを開発して コンテストに出したり、実際に日本でマーケティングテストをしています。 今後は世界で2番目にココヤシの生産量の多いフィリピンで事業を展開していこうと 考えているところです。

「コミュニティ」からイノベーションが生まれる

ーそんな途上国での取り組みをきっかけに、日本でも地方創生をやり始めたんですね。

はい、途上国で出来たのであれば、地方でも出来るだろうと思いました。

プロジェクトを終えた2012年頃、『柏の葉オープンイノベーションラボ』でイノベーションに関するプランを提供する仕事をしていたのですが、その話を聞いた地元・山口市の方から、『新山口駅北地区拠点施設』で走らせるイノベーションプログラムを作ってほしい、とお話をいただいたことがきっかけです。

そこから、京都で起業家シェアハウス『Fespa京都』を運営されている方などに、地方で成功するためには何が課題で、どうすればうまくいくのかをヒアリングしました。すると、大切なのは、「その地域 でしかできないことを軸に、イノベーションプログラムをやること」だということがわかりました。これは、僕も東ティモールでのプロジェクトで実感したので同意です。

そして、もうひとつは「コミュニティ」の力でした。

「地方発ノベーションをデザインする」というテーマで、NPOや代理店など、伝統産業の職人さんの作ったものをリブランディングして世界に売るような方たちを呼び、新規事業をやるときの具体的な着想を得てもらうために開催したんですけど、これが大ゴケしたんです。

「コミュニティ」を作って、少しずつやっていかないと根付かないな、と反省しました。

ー地方でイノベーションを起こすには、「コミュニティ」が不可欠なんですね。

学術用語で「サービス・エコシステム」という価値共創に必要な考え方があって、様々なアクターがサービスを交換し、リソースを統合することで1つのサービスができるのですけど、リソースの量や質を高めることが重要になってきます。

これを地方に当てはめて考えてみると、地方にとっての「サービス・エコシステム」は「コミュニティ」が近い存在になるんですよ。多種多様な人たちがいて、その濃度を高めることが、様々な新しい価値を提案することに繋がります。

また、県外の人から見ると、新しく地方で何かを始めようと思っても、どこに行けばいいのか、誰に会えばいいのかわからないですよね。それが、中心的、代表的な「コミュニティ」があればそこにアクセスするだけで、主要なプレイヤーに会えて、エコシステムのなかにすぐに溶け込むことができる。

そのわかりやすい構造が全国に展開していれば、コミュニティが繋がって、より地方が活性化していくんですよ。

「コミュニティ」に必要なのは「主」の存在

ーなるほど。県外の人と繋がれるという意味でも「コミュニティ」は重要なんですね。実際に、地方で「コミュニティ」を作るのは容易いのですか?

作ることはできても、定着させるのは難しいと思います。現在、地方でうまくいっているコミュニティのひとつに『イノベーションスタジオ福岡』というイノベーションプログラムがあります。

これは、2014年ころに発足された、福岡の"人"を起点に、多様な人材によるアイディアを企業の力と結びつけイノベーションを生み出していくものなのですが、その運営の方に話を聞くと、かなり時間をかけて作られていたとのことでした。

ただ、一度基盤を作ってしまえばしっかり定着して、プログラムが終わった今でもいくつかのプロジェクトが走り続けていますし、もう6年間も継続してやられている。これが理想的な形だな、と思いましたね。

ー地方における「コミュニティ」形成を成功させるポイントは何なのでしょう?

「主」のような思想面、実務面で仕切る人が重要だと思います。それはその地域の人でも、外部の人でも良いとは思うのですが、危険なのが、よくわからない人に頼んでしまうことです。

これは、その人が悪いというよりは自治体の問題で、どこに発注をすれば、成功確率が高まるのかをきちんとリサーチするという、発注する側の努力が必要です。

その努力を怠ると、怪しい業者やコンサルタント入って失敗し、懲りて終わってしまう、という良くない結果になってしまう。地方創生ではこのような展開になってしまうことが少なくないです。


ーコミュニティマネージャーのような人の存在が重要となってくるんですね。

地方では、税収を上げて経済を回すのが大切ですが、既存事業だけではいずれどこかで売上が下がるので、新しい事業をどう生み出すのかを考えていかないといけない。そのために、「コミュニティ」は必ず必要です。

「コミュニティ」は東京にいるとあまり意識しないものかもしれません。一方で、地方は地域の繋がりが重視される「助け合い」文化のもとで成り立っています。なので、地域課題を解決したい、という人は横の繋がりを重視して、コミュニティ作りをしていってほしいですね。



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