デジタルマーケティングが広がる現代、顧客との新たなコミュニケーション方法を探している企業の方も多いのではないでしょうか。
そんななか、「コミュニティ」を作ることで、良質なプロダクトやサービスを広げていく「コミュニティマーケティング」に注目が集まっています。

今回は、「コミュニティ」という軸で、様々な分野で人と人とをつなぐ取り組みをされているゲストをお招きし、それぞれの事例をもとに、マーケティング施策のヒントとなるようなテーマでお話しいただきました。


脇雅昭 氏
神奈川県未来創生担当部長、「よんなな会」主宰。1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省入省。熊本県庁に出向後、総務省で、人事採用、会計制度の改正を行う。2013年から神奈川県庁に出向。現在はナッジやテクノロジーなど、新たな手法による社会課題解決を目指す未来創生担当部長として従事。『よんなな会』を主宰し、官僚と47都道府県の地方自治体職員を繋いでいる。

「公に携わるってカッコいい!」社会を目指して

公務員というのは「9-5時勤務で安定している」「役所で受付をしているだけでやる気がない」という固定観念で語られがちですよね。

実際には全国に330万人いて、いろいろな仕事があるのに、一括りにされてしまう。

僕は、そんな公務員をもっと素因数分解して、個人として捉えてもらいたいし、「公に携わるってカッコいい!」と思ってもらえる社会を目指して、2010年頃に、全国47都道府県の公務員と国家公務員を繋ぐコミュニティ「よんなな会」を発足しました。


そのなかで、僕は「日本で誰よりも飲みまくって仲間づくりをしている公務員」だと自負しております(笑)

仲間づくりはこれからの公務員にとってとても大切なことだと思っています。なぜなら今、国が抱えている問題は行政だけでは解決できないからです。「行政」や「民間」と言っても、世の中を動かしているのは「人」であることに代わりはありません。最近では、世の中に会社というものはなく、それだって、人の集合体、コミュニティでしかないなと思っています。

今の時代は、「人類史上、最強に人と人とが繋がりやすくなっている」。だからこそ、素敵な人と出会えば、行政や民間の壁なく、いろんな企業を巻き込みながら、もっと世の中を良くすることができると思っています。

公務員の先輩たちもこれまでずっと「どうやったら世の中を良くしていけるか」と、その時代その時代で考え続けてきましたが、僕も、今の時代だからこそできることをみんなで一緒に考えていきたいと思っています。

個と個の掛け算で、「ハッピー」を生み出す仕掛けを

行政が持つ力は下記のようなものがあります。

1)法律・条例・ルール
2)補助金・交付金
3)つなぐ力・信用力・信頼

そして、こういった力を、今の時代に合わせて使うことで、もっと多くのハッピーを生み出すことができると思っています。

たとえば、株式会社Helteでは、デイサービスなどに通う高齢者と、海外で日本語を学習する外国人学生をつなぐサービスを提供しています。

日本語を学習している外国人学生にとっては、僕ら日本人は「ネイティブ」なんです!特に、おばあちゃんの言葉は、正直「聞き取りづらい」ですよね。ですが、外国人学生にとっては、ハッキリとした発音よりも、微妙な発音を聞くほうが難しいのでリスニング力が高まります。むしろ価値なんですね。

そうすると何が起こるかと言うと、外国人学生は日本語が上達するし、おばあちゃんはその学生のために積極的にデイサービスに行き始めたり、教材となるニュースを集めるためにNHKを見始めたりするんですよ。おばあちゃんがある日突然役割を持って、「先生」になってやりがいを見つけるんです。とっても価値あることだと思うんです。

ところが、この価値をスタートアップの企業が言っても、高齢者や施設はなかなか耳を傾けてくれないのが現状です。ストリートミュージシャンが素敵な歌を歌っても、なかなか路上では聞いてくれないのと同じです。でも、ここの間に行政が入って、その「信頼」を使うことで、話を聞いてくれてスムーズに繋げていくことができる。

また、神奈川県の座間市では、ゴミ収集車に「ざまりん」というキャラクターを載せたラッピングで可愛くしています。こうすることで、今まで遠ざけられていたゴミ収集車に、子供たちが寄ってくるようになったんです。

そうすると、危ないので運転を丁寧にするようになり、現在、無事故無違反2000日を超えています。さらに、集まってくる子どもたちにもっとリサイクルのことを知ってもらうために何かできないか、とペットボトルのキャップで手作りのメダルを職員皆で作り始めるなど、結果的に職場コミュニティもめちゃくちゃ良くなりました。

最近では、「よんなな会」を通じてお坊さんの会もできました。お坊さんもかつては行政の役割を担ってきた存在で、毎日のように地元の人たちと話しているから、ここと地方公務員が出会えばいろんな社会課題の解決に繋がるんじゃないか、と考えています。

そういった、人と人との掛け算、アイディアが組み合わさり、何かを通じて繋がっていくことで、世の中がハッピーになっていく。そんな仕掛けづくりをしていくことが大事だと思っています。

47都道府県の大人たちを仲間たちに

世の中では、KPIKPIと、なんでも数字で表現できると仮定して、その成果を追い求め続けています。けれど、これだけ社会が多様化していくなかで、「幸せ」や「価値」は、本当に数字だけで表せるのか。そういう疑問を抱いています。だからこそ、よんなな会ではどれだけ多くの大人たちを「仲間」にできるか、そして「笑顔」にできるかを目標にしています。


なぜなら、笑顔の状態は人と人とが繋がりやすく、思いのある人同士が仲間になれば、自ずと新しい価値が生まれると信じているからです。

あわせて、新しい価値観に触れて、価値観をアップデートしていくことも大事だと思っています。

以前、ベトナムの新聞社に新しくなった小田原城を取材してもらおうと思ったら、ある一本の木の前で立ち止まって、「わお、ビッグ盆栽!」と言ったことがありました。

調べてみると、その木は樹齢400年で、その枝を鉄で補強していたのを見て、大きな盆栽に見えたようです。彼らには小田原城よりもこれが価値に見えたんですよ。これは、日本のなかにいる僕らだけじゃ気付けない価値ですよね。

公務員業界でも同じことが言えて、普段の業務外の人たちと関わることで、公務員自身が「公務員の仕事はもっと可能性を秘めているんだ!」と気付いて動き始めれば、世の中はもっと良くなると思うんです。

最近ではパブリックビューイングも始めました。全国にいる公務員330万人にリーチするためには、まだまだ物理的・時間的制約がある。だから、地方で10~20人が集まったら、そこに映像を繋げることで、地方でも少しずつ新しいコミュニティが増えるよう仕掛けています。

情報に溢れる社会だからこそ、「For You」の意識を

最後に、僕が大事にしているのが「For You」の力です。


大々的に告知をするのではなく、基本的には公務員同士が「あなたに来てほしい」と誘い合って来るような「口コミ」の形でここまで広がってきましたし、運営メンバーも「あなたにやってほしい」とスカウトしてきました。

誰もが情報を発信収受しやすい時代だからこそ、人は情報に溢れ、ひとつひとつの情報の価値が下がって来ている。だからこそ、「あなたに来て欲しい」というForYouの価値が増していて、その時に人の心は動くと思っています。

コミュニティを運営する方がいらっしゃれば、「何人集客する!」というKPIではなく、まずは顔の見える小さな繋がりを大切にして、始めてみてはどうでしょうか