デジタルマーケティングが広がる現代、顧客との新たなコミュニケーション方法を探している企業の方も多いのではないでしょうか。
 
そんななか、「コミュニティ」を作ることで、良質なプロダクトやサービスを広げていく「コミュニティマーケティング」に注目が集まっています。
 
今回は、「コミュニティ」という軸で、様々な分野で人と人とをつなぐ取り組みをされているゲスト3名を招いた、トークセッションの様子をお届けします。
 

徳久悟 氏
九州大学 大学院 芸術工学研究院 准教授。博士(政策・メディア)。2013年、個人投資家及びビジネスパーソン向けメディアの運営等を行う株式会社ナビゲータープラットフォームを共同創業。2014年、ココナッツ・ジュースから作る醸造酒・蒸留酒の開発を行う株式会社ワニックを共同創業。著書に『地域発イノベーションの育て方:リソースから紡ぎ出す新規事業』がある。
 

後藤健市 氏
株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング 代表取締役会長兼社長。1958年、北海道帯広市生まれ。大学卒業後、セールスプロモーション関連会社を経て、1986年、祖父が創設した社会福祉法人ほくてんに入職。視覚障害者情報提供の IT 化に携わるほか、福祉の心を育てることを目的とする教育事業を全国に展開。同時に、地域内外でのまちづくり活動に積極的に参画し、地方創生の新たなアイディアを実現するための会社や団体の設立、場所の価値を生かした企画と実践、講演活動や人材育成、仕組みづくりに広く尽力している。現在は、これまでの経験とネットワークを活かし、株式会社スノーピークのグローカル地方創生担当として、地域にある自然資源や景観、環境、食などを「野遊び」で楽しみながら地方創生する事業と、“Noasobi”のグローバル展開に取り組んでいる。
 

脇雅昭 氏
神奈川県 未来創生担当部長、「よんなな会」主宰。1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省入省。熊本県庁に出向後、総務省で、人事採用、会計制度の改正を行う。2013年から神奈川県庁に出向。現在はナッジやテクノロジーなど、新たな手法による社会課題解決を目指す未来創生担当部長として従事。『よんなな会』を主宰し、官僚と47都道府県の地方自治体職員を繋いでいる。
 

徳山太毅(モデレーター)
株式会社アマナ 地域活性本部長 兼 西日本支社長。「どうしたら各地域が “自走”できるか」という大命題に対して、ローカルブランディングをはじめとした “コミュニケーション”領域で貢献することを自らの視座とする。北海道から九州まで日本各地の地方自治体とともに、自走へ向けた様々な事業の企画立案から実施まで幅広く活動中。
 
 

「地域で働く」ために大切なことは?

 
徳山:
本日は素晴らしい講演をありがとうございました。ここからはみなさんとトークセッションをしていきたいと思います。御三方はそれぞれが地方に根ざしたコミュニティ作りや活動をされていると思いますが、そのなかで共通の話題として大切なのが「人と人との繋がり」「場づくり」「自分の思い」なんだな、ということを感じました。
 
そのなかで、今の世の中的には「働き方改革」というキーワードがありますが、人が自分の価値観で働く場を地域が持てるのではないか、そのきっかけがコミュニティになるんじゃないかな、と考えています。そこでまずは、「地域で働く」ことについて考えていることを伺いたいです。
 
徳久さん:
そうですね、起業支援はどの自治体でもやっていますが、そこにどんな人が相談に来るかというと、地域の日常生活に密着した起業,具体的には,飲食や美容院をやりたい人で、「新しい画期的なテクノロジーを使ったビジネスをやりたい」という人は基本的には相談に来ません。
 
私個人の考えとしては、いかに地域に密着した形のビジネスをデザインしていくかが、外から人を呼ぶ鍵だと思っています。
 
たとえば、山口県に関してはすでにIターンブームは過ぎ去りました。「自然のあるところで子供を育てたい」などの理由でUターンの話は私の周りでも多く耳にしますが、それも地域ではなくリモートで東京の仕事をやっているという現状です。
 
つまり、「そこに行かないといけない何か」がないと、人は地域にわざわざ移住して来ないんですよ。だから、その地域で動かせないリソースは何かを考えて、ビジネスを設計するのが大事ですよね。
 
脇さん:
たしかに、今あるものを活かすのは大事で、「人」もそのひとつですよね。たとえば、『地域おこし協力隊』の想定されているゴールは、「移住と起業」なんですが、島根県のある町が課しているミッションは、「地元の人と仲良くなれ」というものなんですよ。
 
たとえば、おばあちゃんが電球の交換が必要なら手伝ったり、街のお助け屋さんみたいな存在になるとします。そうすると、その人が起業してパン屋さんを始めると、とびきり美味しくなくてもその人が出て行ったら困るから、みんな買うんですよ。
 
徹底的に頼られる存在になる。そうすると、今地方に来ている人と地元の人が自然とミックスされていき、関係性が深まっていく。そこがポイントだと思っています。
 
徳山:
どうしても内と外って分けがちですけど、そこで考えると「レッテル」になってしまいますよね。それを取っ払うひとつの方法として、地元の人と仲良くなったり、同じ場所に足繁く通ったりするのはありますね。
 
後藤さん:
地域で仕掛けるなら、人とのご縁は必然ですよね。そこに、いろんな思いを持って動く。これを働き方改革「MSV」と呼んでいます。
 
M:マネー…生活に必要なもの
S:趣味・ソーシャル…好きなもの
V:ボランティアワーク…最もバリューが高いもの
 
好きなことって大事だから金も時間も使ってやるじゃないですか。だから、地方創生も「好きなこと」で仕掛けるのがキモだと思っています。
 
理想は「たのかっこいい」仕掛けづくり。何故なら楽しいことは継続できるからです。ただ、自分たちが楽しいだけでも、かっこいいだけでもダメなので、そのバランスは自分で大切にしてほしいです。

 

実際にコミュニティを広げていくには?

 
徳山:
実際にコミュニティを作って広げていくときに、特に気をつけていることはありますか?
 
脇さん:
僕は、人こそ最高のコンテンツだと思っています。
 
全国の人をもっと繋げたいと、これまで呼ばれてもいないのに全国に押し掛けていましたが、そこでわかったことは、地元の人たちって意外と狭い範囲でしか繋がっていないんですよ。でもそこに外から人が来れば、「よくわからない人が来た」と、それをきっかけにみんな集まって来て、地元の人同士が繋がる、ということがありましたね。
 
そういう機会を増やして、そこにいる人たちの良さをどれだけ引き出せるかが重要だと思います。コミュニティの外の人だからできること、中でないとできないことがあるなと感じています。
 
徳久さん:
シェアハウスを運営している元教え子がいるのですが、彼は理念やアイデアを持っている「ビジョナリー」タイプで、実務などは苦手です。一方で、スケジュールやお金の管理などの実務は、シェアハウス内の別の方が担っている。 ビジョナリーと実務、どちらが欠けてもコミュニティは機能しないので、1つのコミュニティにビジョナリー担当と実務担当の2人が存在いるのが理想的だと思っています。
 
後藤さん:
僕は「信頼」や「仲間」を大事にしています。地方って、人と人との関係性が濃すぎて面倒臭く思えるかもしれませんが、それがグローバルバリューが高いということなので、再認識して活かすのが重要なんです。
 
あと、幅広く繋がれるキーワードとして「世界一」というのがあります。例えば、「北海道一」と言ってしまうと奪い合いや競い合いになるんですけど、「世界一」と言うと、規模が大きすぎてよくわからないから広がっていってひとつになるんですよね。
 
それから、先ほど脇さんも言っていたように、よその人が来ることで、内でも繋がれるのはコミュニティにとって大事なことですね。あとは楽しく飲むことかな(笑)。
それぞれの地域が持つ「可能性」は?
 
徳山:
最後に、それぞれの地域が持つ「可能性」について教えてください。
 
徳久さん:
よく観察してみると、いろんなリソースがそれぞれの土地にあるんですね。でも、それを本当に有効活用できてるかというとそうではない。たとえば、山口県に旅行に来たら、山口県産のお酒を飲みたいじゃないですか。でもお店の人が出すのは新潟産の日本酒だったりするんです。あとは、JR西日本のインフラが進んでいなくて、ICカードが使えなかったり。
 
そうやって、使い手や顧客の気持ちになって考えたら、もっとできることがありますよね。せっかくポテンシャルがあるのだから、今こそユーザや顧客視点でサービスを検討できるデザイナの出番だなと思っており、非常に可能性は感じております。
 
後藤さん:
海外に行けばわかるけど、こんなに自然があってごはんが美味しくて安心安全な国はなかなかないんですよ。そのグローバルな価値を再認識すれば、グローバルトップリゾートジャパンになれるはず。
 
たとえば、北海道のニセコは、雪の質も高く、素晴らしい! と海外の人に評価されて、あっという間に外国人に人気の場所になりました。田舎に行けば行くほど、日本という国はグローバルバリューが圧倒的にあるのを再認識してほしいです。
 
あとは、「可能性」という言葉を使いましょう。「地方は空き地と駐車場ばっかり」と言うのではなく、空き地と駐車場を 「可能性の空地」と呼ぶ。そうやって、「可能性」をつけただけで意識が変わるじゃないですか。「可能性」は誰が生かすのかというと、価値を見出した人が自分たちで生かさないといけないものなんです。
 
脇さん:
最近、引きこもりのNPO法人とゲーム会社の人が出会って、「引きこもりインターン」が始まりました。引きこもって一生懸命ゲームをしている人たちは、ゲーム会社の人たちにとってはものすごく「価値」のある人材だったんですよね。
 
実は、僕は公務員10年目になるまで、毎年辞めたいと思っていたんですよ。
 
でも、今はあまり思ってない。何故なら、人と関わるなかで、まわりの人が自分では気付けなかった、公務員としての価値を教えてくれたからなんです。
 
だから、人と出会うことって本当に価値だし、「可能性」だと思っています。
 
徳山:
…というわけで、残念ながらそろそろお時間となってしまいました。御三名方、貴重なお話をありがとうございました! 本日ご参加いただいたみなさんが改めてコミュニティや地方創生について考えるきっかけとなれば幸いです。ご参加いただき、ありがとうございました!