「私たちは、それぞれの企業にて社会課題を解決するイノベーションの創出を目指す仲間たちに、その志や悩みを共有できる家庭、会社、個人のコミュニティを超えた4thプレイスを提供し、ワクワクする未来作りに挑戦します」
これは、NTTコミュニケーションズが主催する企業コミュニティ、『C×4 BASE』が掲げているビジョンです。今回はそんな「大企業による大企業のための」という新しいコミュニティを仕掛けるマネージングディレクター・戸松正剛さんに取材してきました。

戸松正剛さん
NTTグループ各社(NTT~東日本~西日本~持株~コミュニケーションズ)にて、主にマーケティング/新規事業開発に従事。直近は、NTTグループファンド出資先スタートアップの成長/Exit支援、Jリーグ様他プロスポーツ業界とのアライアンスなど。
ドラッカーのマネジメント二大要素「マーケティング」と「イノベーション」を大企業レベルでいかに実践するかをテーマに、お客様との共創コミュニティ「C×4 BASE(会員:大企業を中心に260社700名)」を運営中。Vanderbilt University Owen Graduate School of Management(MBA)卒、JMAマーケティング総合大会企画委員 等。

『C×4 BASE』で取り組んでいること

ー『C×4 BASE』はどのくらいの期間、運営されているんですか?

『C×4 BASE』として生まれ変わったのは2019年の2月です。
もともと『C×4 BASE』はコミュニティというよりも、『2020ビジネス創造研究会』という名称で4年ほど運営していた研究会でした。「オリンピックも始まるし、新しいことに挑戦したい」というところから始まって、同じ思いを持つお客様にお声がけをして、ざっくばらんに未来を語ろう、というものだったんです。
 
ただ、組織として運営していると、どうしても現場が乖離してきてしまう。僕がジョインしたときには、現場で営業をやっている人から、「これって、結局、何のためにやっていると?」と言われてしまうような研究会になっていました。そこで、何を目的にやっているのか、どう営業活動に繋がるのかをクリアにするためにすべてを一新することにしました。
 
もともと僕は前職でNTTグループのスポーツアライアンスを担当していて、そのときに「NTTがスポーツ分野におけるデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる」ということを2020年までに認知してもらうため、ブランディングを含めて3年ほど携わっていたんです。今やっているのは、そのときにやっていたことと似ています。「それ、儲かるの?」「なんでNTTが?」という社内外の無言の圧力に対して、コンセプトを形にして見せてあげるという作業という意味で(笑)。
 
現在僕がやっていることは、「コミュニティ運営」よりも「コミュニティマーケティング」というほうがしっくり来ます。目的はあくまでマーケティング、というのを定義したうえで、ブランドを整理したり、コンテンツを目的に合ったものに寄せたり、逆に合わないものは捨てたりしました。
 
たとえば、「大企業コミュニティ」という軸を定めたら、スタートアップをマッチングするような機能などはすべて捨てて、中途半端にオープンイノベーションを謳うのを辞めました。「できること・できないこと」「やること・やらないこと」を決め、立ち位置をハッキリとさせることから始めたんです。もともとメンバーもコンテンツも良い素材は揃っていたんですけど、ひとつのメディアとして魅力的に編集されていないような気がした。なので、最適なマーケティングコンテンツを目指して、編集作業を継続してきた感じです。実はゼロから新しいことしているという意識はありません。。
 
ーなるほど、社内外双方に向けて、コミュニティのリブランディングを始めたんですね。

コミュニティのメンバーを繋ぐのは「バーテンダー」


ー現在はどのような人が在籍しているんですか?
 
現在ユーザー数は700人、大企業を中心に約260社ほどが在籍しています。人数が増えてきたなかで意識しているのは「ハブ」です。
 
僕のなかのイメージは「バー」で、例えば、大きめな街のバーに行くと複数のバーテンダーがいて、それぞれ自分のお客さんを持っていますよね。その際、自分自身が接客できるお客さんには限りがあるので、目の前に常連さんがいて、隣に一見さんが来たら、上手に紹介して、人間関係を繋ぎにいくでしょう。僕はうちのスタッフにそんなイメージを持っていて、懇親会やセミナーの後のワークショップでヨコヨコを繋いでもらうようにしています。
 
僕も学生時代バーテンダーをしていたのですが、やはり個人だとスケールしなくて、重複してお客さんをカバーしていないとダメなんですよ。それとコミュニティはまったく同じで、「この人がいるから楽しめる」という人が複数人いるのが重要です。
 
お客様が不特定多数のBtoCの商売だとそこまでハイタッチにできないですが、我々は所詮3桁から4桁の会員を相手にしているので、ほぼ全員の顔を覚えている。BtoBならではの規模なので、こういうことができるかなと思っています。

ーちなみに、コミュニティのなかに”リーダー”のような声の大きい人はいるんですか?
 
リーダーというか、コミュニティに想いがある方のために企画委員会というミーティングという定期的に開催しているので、そこに入っていただいて運営に対する意見をいただくことはあります。ただ、学者、投資家、コンサルタントなど有識者の方は趣旨が違うのであえて参加はお願いしていませんね。
 
ここはスタートアップのアクセラレーターみたいにアドバイスをもらって何かを磨いていく世界ではなく、やっている人たちが当事者でいてほしい。なので、ご本人が事業に関わっている方々で構成されています。そこはちょっとオリジナリティがあるかもしれませんね。

コミュニティの熱量は「質感」で決まる


ーメンバーはどんなことを求めて『C×4 BASE』に参加するのでしょうか?
 
メンバーが『C×4 BASE』にいるモチベーションは3つ在ると思っています。まず、「自分の知らないことを知りたい」という「知識欲」。

次に、『C×4 BASE』のネーミングのもととなっている「4th Place」への「所属欲」。こういうのは何ですけど、僕たちを含めた新規事業を担う方って大企業中では「亜流」だと思うんです。いわゆる「本流」の人は営業や製造のプロで誰からもも文句を言われない程度のキャリアを持つ人。その人たちから見ると「亜流」の人たちは、「新規ビジネス?それ稼げるの?毎日遊んでるみたいで良いねえ。」という感じですし、トップはトップでやれという割に意外に支援をしてくれない。(笑)
 
そういう人は、元来タフで鈍感力のある人が多いのだけど、さすがに「知識欲」だけでは心が折れることもありますからから、社内外に自分と同じような方がいる、という「安心感」と、外でネットワークを持っていることを示す「Know who’s」を求めて来てくれるんだと思います。
 
そして、3つ目が「何だかよくわからないけれど居心地がいい」という「質感」です。誰でも潜在的には、質の高い環境やコンテンツを求めている。無機質な会議室よりはおしゃれな場所の方良いし、どうせ飲むならおいしいコーヒーが飲みたいですから、セミナー一つとってもディテールは大事です。言葉にすると理解されにくいので、具体的に体験してもらうことが社内外の納得感を高めると思います。
 
ーなるほど。コミュニティを持続させるにはメンバーの熱量が大切だと思うのですが、何か工夫されていることはありますか?

3つ目の”質感”を上げていくことを意識しましたね。物理的なスペース、プレゼン、コンテンツなど総合的な質感です。
 
全体的に高めないといけない理由は、ビジュアル、コンテンツなど、どれかひとつだけを華美にすると、そこだけが悪目立ちして、質感が落ちてしまうから。全体としても、変に上げすぎても現実のNTTコミュニケーションズのブランドイメージから乖離してしまうし、一方で下げすぎるとメンバーの熱量が下がってしまうので、いかに社内外からみて、身の丈にあった背伸びをするか、言い換えるとうちのメンバーたちのハンドクラフト感を残すかを大事にしています。
 
だから、あえてプロの司会を雇わず、僕自身がファシリテーションをやったり、ロゴも作ってもらうときにも、どこかの外資系企業みたいにクールな感じにせず、ダサかわいい、ややもっさりしたテイストをを敢えて残してもらったりしました。
 
あたたかみがあって、一緒にいるのが心地いいような絶妙なポジションに立ちたいですね。
Know who’sですかね?

コミュニティの「目的」を見失わない

ーコミュニティ運営において苦労することはありますか?
 
まずは、アウター・インナーブランディングのバランスです。外に向けてばかりやっていると、社内に味方がいなくなっていたりするし、逆も然りです。だから、極力社内の幹部の皆さんに認知してもらえるように動くことを心がけていますね。
 
あとは、これはあくまでマーケティングなので、究極的には全会員の皆さんが我々とビジネスができる集まりにしていくのが理想なのですが、現実はそうはなりません。
 
新しいビジネスにつながる可能性が薄い方も当然いらっしゃいますが、、そういう方たちに中には、「人と人とのハブになる」というカタチで、大きくコミュニティに貢献してもらっている方もいるので、その見極めが難しいし、重要ですよね。
 
コミュニティはいろんな目的があって良いとは思うのですが、『C×4 BASE』に関してはマーケティングを基軸に、最終的には一緒にビジネスをすることを目的とした前線基地になることです。
 
大きなイベントで認知を上げ、ワークショップで会員の皆さんの課題と解決の方向性を可視化して、最後に実際に物を作ってPOCまで持っていく。
 
営業目線では、このタイミングで有効リードとなるので、社内的には「これはコミュニティ運営ではなくて、マーケティング」とみんなで認識できる。取り組みは、リアルもデジタルも最適な量を投下して、試行錯誤しながらやっています。
 
会員の皆さんの目線での一つのメタファーとしては「将校クラブ」です。軍隊の基地のなかには陸、海、空のそれぞれの将校クラスだけが入れる社交クラブがあったりするんですけど、様々なバックグランドを持つ方がカジュアルに情報交換をして次の戦場に向かう、というような場所を作れたらと思っています。